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【世界の食と農】第6回 ロシア~逆境に絶え抜き、自給自足を成し遂げた大国。~

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前回までで、アメリカ(近代農業の台頭者)と、オランダ(最先端の農技術)について見てきました。今回の投稿では、大陸を変えて「ロシア」について見ていきたいと思います。

ロシアは、北国であまり栽培に適した環境ではないのですが、その中でも、自国の生産力を上げ、国民が生き抜くための食糧を確保しています。さらには、アメリカ発(金貸し発)の遺伝子組み換え種支配にもはっきりとNoを突き付け、国家として禁止している非常に稀な国です。

このように、農と食を国力の重要な基盤に位置づけたロシア。彼らの変遷と戦略について、複数回に分けて見ていきたいと思います。

■食糧危機を乗り越える
ロシアは、ソ連時代(1900年初頭)の10月革命の時代、異常気象も相まって非常に厳しい食糧危機に陥りました。そこでロシア政府は、余っている土地を都市住民たちに貸し出し、兼業農家とすることによって食糧生産を賄おうとしたのが、最初の始まりです。

この政策は、「ダーチャ」と呼ばれ、郊外の土地600㎡くらいが基準となり、国民自分たちで家や小屋を建て、週末や長期休暇の際に滞在して、農作業する文化が定着することとなりました。

その結果、ロシアでは国民3400万世帯のうち、約8割が菜園を持つか、野菜作りの副業を行っているという驚異的なプチ農家を生み出すことに成功しました。
これは、ほぼ国民の自分たちの力で、自給自足を実現した国家として言っても過言ではないでしょう。

■国民の力で、自給自足で食糧確保する政策改革「ダーチャ」

17年、レーニンが農民たちに、地主階級から没収した土地の再分配を約束した十月革命にさかのぼります。その後、申し出があれば、自留地と呼ばれる個人の土地が与えられたのが、今日のダーチャの起源とされています。慢性的な食料不足という問題を抱えていたロシアでは、土地はあっても食料を買う外貨がない。そこで都市住民を兼業農家にしたというのが、現地ガイドの説明でした。

 

モスクワ州のダーチャ所有家族328世帯の野菜の収穫量(600平方メートル当たり)を調査すると、ジャガイモ240キロを筆頭に、相当の作物を自給していました=グラフ参照。1990年代前半、ソ連崩壊後の混乱でモノ不足に陥ったロシアで餓死者が出なかったのは、ダーチャがあったからだといわれています。

平日は街で働き、週末はダーチャで過ごすというのが平均的な都市住民の姿です。だからモスクワでは金曜日の夕方になると、都市住民がダーチャを目指して一斉に郊外へ向かうため、道路が『ダーチャ渋滞』するほどです。

ロシアでも、野菜は買った方が安い時代に入った感はあります。でも安全な野菜を家族に食べさせたいという人、年金暮らしの人などはダーチャで野菜を作り続けているし、そうでない人は田舎でゆっくり過ごすことを優先しています。

■自然の中で働き方・子育てで活力ある暮らし

「ロシアの学校の夏休みは3カ月。両親は共働きが一般的なので、子どもは夏の間、祖父母と一緒にダーチャで過ごし、後から両親が合流するというパターンも多い。そこで自然との付き合い方や祖父母の知恵を学ぶといいます」
-生きる力は、日本人よりロシア人の方が数段上のようです。

「お金も電気も機械も使わず、自分の頭と体で何ができるか。ダーチャで生活力を養っているロシア人は、農民にも大工にもなれるから、経済危機も自分の力で乗り越えることができたのでしょう。原始的な技や古来の知恵を侮ってはいけない、と教えてくれるダーチャ。それは便利さの中で全てをお金で買う生活に少しでも疑問を持つ人たちにとって、暮らしを見つめ直す鏡になると思います」(https://www.nishinippon.co.jp/item/o/18272/)。

今回は、食糧危機から脱却するために、ロシア国民の大きな暮らしの転機となった「ダーチャ」政策について見てきました。次の投稿では、米国の遺伝子組み換え種子支配とどのように向き合ってきているのか、ロシア上層部の闘いについて見ていきたいと思います。

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