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【ロシア発で世界の食糧が変わる】4~小麦の価格高騰は世界で革命を起こしてきた~

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これまでの記事でもロシアやウクライナが世界有数の食糧輸出国であることをお伝えしてきました。

ロシアは世界最大の小麦輸出国であり、ウクライナは世界で5番目に小麦を輸出している国です。

この2つの国だけで世界の3割近くの小麦を供給しており、ロシアによるウクライナ侵攻にともなう輸出停止、各国の経済制裁による輸入制限は世界の食糧事情に大きな影響を与えます。

 

・ウクライナとロシアの世界における輸出量 FAO / Our World in Data, CC BY-SA

※画像はこちらからお借りしました。

 

ウクライナは輸出できない小麦が港に溢れかえっており、侵攻によって畑は攻撃の爪痕が残されています。

今年はウクライナの「小麦収穫量が半分になる」と予測されており、収穫量を戻すには長い時間を要するため世界各国への影響は長期に及ぶ恐れがあります。

 

・ウクライナ南部ムィコラーイウの小麦畑に落下したミサイル Vincenzo Circosta/ZUMA / Alamy

※画像はこちらからお借りしました。

(参照:ウクライナの小麦収穫が半分以下に。世界に及ぼす影響とは)

 

小麦の価格高騰は世界に革命を引き起こしてきた

前回の記事でも触れたように、イランでは小麦粉の価格が3倍にまで急騰しています。

食糧は日常に欠かせないものであり、主食の材料として利用される小麦価格の高騰は人々の生活に大きな影響を与えます。

実は、この小麦価格の高騰は世界各地における「革命のきっかけ」となってきているのです。

・チュニジアの反大統領デモ(2011年1月)

※画像はこちらからお借りしました。

 

 

記憶に新しい「アラブの春(2010~2012年)」は小麦の価格高騰をきっかけに、高まっていた反政府の意識が爆発し、アラブ諸国全体を巻き込んだ大規模反政府デモに発展しました。

 

中国における「天安門事件(1989年)」も、穀物価格が高騰により生活の困窮が強まり、学生が主導した民主化運動を引き起こすことに繋がりました。

この事件はいまでも中国政府が「放漫財政によって物価高を招けば、社会が不安定になり共産党独裁体制の土台が揺らぐ」と懸念するほどの影響を与えています。

 

そして、「フランス革命(1789~1795年)」も王族や貴族の圧政下で苦しんでいた市民が、当時火山の噴火に伴う小麦の不足により価格が高騰により一般庶民の人々がパンを買えなくなったため、革命を起こしました。

 

庶民の人々は国家に対して不満をいだいていたとしても、投獄や処刑されるおそれがあるため、一定の生活苦を耐えることができます。

しかし、生活になくてはならない食糧の価格が高騰することで、食糧難におちいった人々の我慢は限界を迎え、革命を引き起こします。

 

小麦の価格高騰は何を引き起こすのか?

※画像はこちらからお借りしました。

 

今回の世界的な小麦価格の高騰により、世界各地で革命の機運が高まっています。

実際に冒頭でも紹介した、小麦粉の価格が3倍にまで高騰しているイランにおいて、5月に「小麦価格の急激な上昇に対して抗議する大規模な反政府デモ」が起きています。

イランだけでなく、世界各地で食料価格の高騰に伴う、革命の機運は日々高まっているのではないでしょうか。

 

(参照:イランで主食の小麦粉価格が「 300% 急上昇」し、大規模な反政府デモが拡大)

 

価格が高騰するのは小麦粉だけではない

また、ウクライナはトウモロコシを年間で1500万トンを世界に輸出しています。

このトウモロコシは家畜の餌として利用されていますが、10年ぶりの高値と言われる状況に陷っています。

この状況は家畜に与える餌の価格に直結しており、結果として卵や肉などの畜産品の価格高騰に繋がります。

 

ロシアのウクライナ侵攻は、小麦粉だけでなく、様々な食糧の価格高騰につながり、世界の食糧難を加速させます。

そして、人々の不満はさらに高まり、世界各地で反政府デモが引き起こされる恐れがあります。

 

(参照:トウモロコシ なぜ10年ぶりの高値?)

 

すべてはロシアの思惑?ロシアの農業改革は革命のためにあった?

※画像はこちらからお借りしました。

 

ロシアは連邦解体以降、近代農業への転換など、徹底して農業政策に取り組んできました。

その結果、世界でも有数の農作物の輸出国としての地位を不動のものとし、世界への影響力を高めてきています。

 

ロシアのこれまでの農業改革は、今回の世界的に変革の機運を高め、世界を変えていくために行っていたのかもしれません。

事実、輸出停止により世界を食糧難に陥らせ、世界的に革命前夜の様相が現実のものとなってきています。

 

ロシアが農業改革によって世界的な食料事情への影響力を高め、今回のウクライナ侵攻による世界的な食糧危機はつながっているのかもしれません

 

次回は、ロシアの農業政策や歴史に触れ、同国の思惑についてもう一段深く掴んでいきたいと思います。

 

【参考サイト】

習近平も「震えている」…! 世界の“食糧不足”でこれから「本当にヤバくなる国」の名前

日本も他人事でない世界の食料危機 対ロ制裁の代償、各国に跳ね返る 輸入依存国ほど事態深刻

アングル:世界で止まらぬ食品インフレ、新興国に社会不安懸念も

価格高騰で世界食料危機の様相 ウクライナ危機が拍車かける OECD消費者物価指数8・8%上昇

 

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